昭和53年2月に信濃町に店舗を構えてから、気づいてみれば人生の大半を漆器とともに生きてまいりました。もともと私は輪島で三代続く塗師屋の次男として生まれました。小さいときから輪島塗と親しみ、一度は輪島塗から離れた生活を送ったこともあったのですが、再び家業を手伝うようになり、そこで漆器の製造や販売の仕組みを勉強しました。そのおかげで1978年にこの店を持つことができました。
創業以来私が力を入れてきたのは漆器の修理です。特に輪島塗はもともとの堅牢さと修理がきくという点により「一生使えるもの」としての信頼があります。修理の多くは思い出の品や代々受け継がれてきたものなどで、修理によって蘇った漆器を見て喜ぶお客様の姿は私にとっての喜びでもあります。
現在は何でも使い捨てになってしまい、ゴミや環境破壊の問題が起きています。ですがもう一度原点に戻り、「ものを大切にする心」を育てていきたいと思っています。
ものというのは何度も使っていくうちに愛着がわいてくるものです。そこには持ち主の人生も写しだされ、いつの間にかなくてはならない存在となっています。しかし、いつかはその大事にしていたものも壊れる日がやってきます。そんなときにそれを修理して再び命を与えてあげることが私たちの役目なのです。
長く使っていただけること、それが作り手にとっても最高の感謝となります。